“美術館”で暮らす 非日常がつくる日常 “美術館”で暮らす 非日常がつくる日常

WE LOVE THIS HOUSE

“美術館”で暮らす
非日常がつくる日常

#011 T邸×ヤエワークス  香川県  観音寺市

#KAGAWA

MEAS×新建ハウジング

住まいに愛着をもつ住まい手とつくり手を取材する「WE LOVE THIS HOUSE」。

今回訪ねたのは、瀬戸内海と山々に囲まれた香川県観音寺市。お遍路が有名な香川県ですが観音寺市にも霊場があり、街では装束を着た人達をよく見かけます。T邸は2023年9月に完成したばかりの新しいお家。延床面積は115.7㎡で、ご家族(旦那さん30歳・奥さん29歳・長女9歳・長男5歳・ペットのモモンガ)が暮らしています。インテリアが大好きな奥さんが思い描いたのは、好きなものを集めた美術館のような家。直感でつながった工務店、ヤエワークスと一緒にその夢が実現しました。

Tさん家族はどのようにお家づくりを進めたのか。設計を担当したヤエワークスの竹田さんも交えてお話を伺いました。

WE LOVE THIS HOUSEイメージフォト

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ゆったりとした凪の瀬戸内海に浮かぶ24の島々。観音寺市にはお遍路で巡る八十八ヶ所霊場のうち、六十八番の神恵院と六十九番の観音寺がある。2つの礼所が同じ場所にあるという珍しい霊場である。

「デザインで人を幸せに」
共感から始まる家づくり

奥さんはインテリアやデザインが大好きなんですよね。
奥さん:好きが高じて今もライフスタイル系のショップで働いています。『TODAYFUL』という洋服のブランドが大好きなんですが、ショップのインテリアもすごく素敵で。お店に通いながら置いてあるものを見ているうちに、デザイナーズの家具に目覚めました。

竹田さん:最初にうちに来てくれた時も、デザインの話で盛り上がりましたよね。

奥さん:ヤエワークスさんとは好みがすごく合いました。もともとヤエ食堂(現・やえ珈琲)の空間が素敵だなぁと思っていて。そしたらインスタで建築部門ができることを知り、DMしたのが2020年の12月。翌月1月に初めてお会いしたら『もうここ!』ってなりました。

旦那さん:とりあえず話を聞きにいってみようかという感覚だったのに、帰りには決まってたよね。インテリアの話ですごく盛り上がってました。

竹田さん:最初は打ち合わせというより『どんな暮らしがしたいですか?』というお話をゆっくりしましたね。奥さんが理想としていた『心の豊かさを大事にしたい』という暮らし方は、まさに私たちが大切にしていること。同じ想いを持った方がうちに来てくださったことがとてもうれしかったです。

奥さん:竹田さんの人柄もすごく良くて、直感で決めてました。他の住宅会社さんには行ってないです(笑)。

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「打ち合わせが毎回楽しみでした」という奥さん。2年間じっくり家づくりに向き合っただけに、まるで友達のように仲良しなTさん家族と竹田さん。

心豊かに暮らせる家とは、具体的にどんなイメージだったんでしょうか。
奥さん:好きなものだけに囲まれたお家です。“美術館・余白・ミニマル”をテーマに、自分たちが好きな家具や雑貨、心が満たされる景色だけを集めたお家を作りたいと思いました。『普通の家はイヤです』って、最初に言いましたもんね(笑)。

竹田さん:面白くなりそうだなとワクワクしましたよ。そういうひと言が欲しかったんです。

奥さん:この家は本当にどの瞬間にどこを見ても美しいんです。普通に生活していても思わず写真を撮ってしまうくらい。インテリアだけでなく、天窓の光やベッドルームの木漏れ日など、自然に移り変わる光景が毎日楽しめて心のゆとりが生まれています。

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外観も内観もミニマルなデザイン。Tさん家族が一番気に入っている天窓は、季節や時間帯で変わる天然のライトだ。

家具と余白
2つの要素が生み出す空間

家づくりはどのように進めていかれたんですか?
竹田さん:今回は奥さんが集めた家具が主役だったので、家具の配置から逆算して設計しました。ヤエワークスではよく採用する方法です。何をどこに置きたいか、また壁の色や質感にいたるまでしっかりとイメージを持っていらしたので、イメージを具現化すること、コスト、間取り、内装材選定と構造的に高さや寸法を整えることが私の仕事でした。約2年間かけて、じっくりと進めましたね。

奥さん:ここにはこの照明、ドアはこういう開き方がいい、取手はこれを付けたいと、細かいところまで全部希望を伝えました。グループLINEで昼夜問わずやり取りができたし、インスタやピンタレストで見つけたイメージはすぐにアルバムでシェアしていました。

竹田さん:奥さんのこだわりに共感しましたし、最大限叶えたかったので、コンセントの位置一つにしても実際に見て決めていただくようにしました。現場裏のご実家にお住まいだったのが本当に良かったと思います。

奥さん:本当にそう。もし遠くて見に来れなかったから『やっぱり変えたい!』ってなっていたと思います。どんな要望でも否定することなく常に前向きに応えてくださって。竹田さんも職人さんも大変だったと思うんですが、めちゃくちゃ楽しい家づくりでした。

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奥さんが自分で描いたイメージ図には家具の種類もしっかり記載。壁に埋め込んだトグルは腰の位置くらい下に設置することで主張しすぎずスタイリッシュな印象に。テラスのドアの取手に、地元産の庵治石を使うなどの遊び心も。

素敵な家具ばかりそろっていて、本当に美術館みたいですね。
奥さん:特に照明が好きで、イサム・ノグチ、ルイスポールセンなどお気に入りがたくさんあります。トイレや洗面所の照明は『NEW LIGHT POTTERY』という奈良の照明メーカーさんのもので、真鍮と電球の組み合わせが気に入っています。

竹田さん:付ける高さが10cm違うと印象が全然変わるので、すべて奥さんに位置を決めてもらいました。

奥さん:リビングダイニングの天窓から入る光もすごくきれい。壁に光の線ができて、時間帯で変わるのもいいですよね。床、壁、天井をすべて塗りにしているので、陰影の感じも楽しめます。

竹田さん:塗り材はモルタルにしたいという希望だったんですが、それだとかなり予算がオーバーするということで、EP塗料に砂や石を混ぜたモルタルライクなオリジナル塗料を作りました。床まで塗りにする方はなかなかいないので、完了検査に来た方が『こんなお家初めてです』と驚いてましたよ(笑)。

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国内外で長く愛される優れたデザインの家具を美しく配置。家具からインテリアを設計していったので、家具と空間が完璧にマッチしている。天窓から入る光は季節や時間帯によって形が変わる自然のデザイン。家具や雑貨はほとんどがデザイナーズ。どこを見ても美しい“好き”だけでつくられた空間。

奥さんが特に気に入っている場所はどこですか?
奥さん:ギャラリースペースになっている土間です。季節や気分に合わせてディスプレイを変えて、常に美しい景色になるように心がけています。ピーター・アイビーの照明もすごく合います。

竹田さん:土間は玄関からひと続きの空間になっていて、あえて段差を作らず境界がわからないようなデザインにしました。生活に必須ではないけれど、心のゆとりを生んでくれる“余白”のスペースですね。大きな木のサッシはオリジナルです。窓が大きいので軒を長くして、夏場はしっかり日陰ができるようにしました。

奥さん:もう一つ夢だったのが、2階のウォークインクローゼット。お店みたいにしたかったのでアーチ型の棚を作ってもらいました。木の棚板を金具を使わず浮かせてほしいとか、寸法まで入れたイメージ図を作って竹田さんに見せましたよね。

竹田さん:私も棚板は浮いているほうがかっこいいと思ったので、余計にノッてきて。なんとか壁に埋め込む方法を考えました。

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玄関入ってすぐの土間は、T邸を象徴する大切な“余白”の部分。この日はイサム・ノグチの照明や一緒に奥さんが拾ってきた石などディスプレイ。ゆっくりと洋服を選べるウォークインクローゼットは贅沢な空間。

旦那さんが気に入っている場所はありますか?
旦那さん:よく料理をするので、キッチンの高さをリクエストしました。2人で料理をすることも多いので、広さがあって快適です。キッチンに椅子を持ってきて、コンロでお肉を焼きながら食べることもあります。

奥さん:塊みたいなイメージにしたかったので、シンクまですべてモールテックスで塗ってもらったんです。奥の棚もギャラリー感覚でディスプレイしていて、お気に入りの食器や道具だけを置いています。

竹田さん:全体的にグレーで無機質な印象なので、作り付けの食器棚や引き出しにはオーク材を使うことで温かみをプラス。真鍮の取手も奥さんが選んだものです。テラスを眺めながらちょっとコーヒーなんかを楽しめるようにカウンターを付けました。

旦那さん:テラスは僕の癒やしの場所ですね。ここでゆっくりくつろいだり、この前は息子とオリーブの実を取りました。この夏はバーベキューやプールもやりたいです。

竹田さん:お引渡しして初めての夏なので、テラスは大活躍するでしょうね。リビングダイニングからテラスに続く扉の取手には、香川県ならではの庵治石を採用。両開きなので、天気が良い日は全開にするときっと気持ち良いですよ。杉板の模様を付けた外壁も力作です。

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家族が並んでも十分なスペースがあるキッチン。オリーブとティーツリーが植わるテラスはご近所から見えない塀の高さになっているため、窓にカーテンをつけるのをやめたそう。

「大切に永く使う」
感性を育む住まい

お子さんがいてもデザイン性の高い家具を置いたり、生活感が出ないのがすごいです。
奥さん:子どもたちには『この椅子はどこどこのこういう作家さんがデザインしたもので、大切に永く使うとビンテージとしてさらに後世に受け継いでいくことができるんだよ』としっかりと価値を伝えています。小さい時から良いデザインに囲まれていることで、感性豊かに育ってくれたり、良い物を選ぶ習慣が身に付いてくれたらうれしい。理解してくれているかはわかりませんが。

旦那さん:僕もデザインのことはよくわからないので、子どもたちと一緒に学んでいますね。でも実際に生活の中で触れていると、やっぱり質の良さがわかるんですよね。だから子どもたちも自然と感じ取って、大事に扱うようになっているのかもしれません。

竹田さん:うんうん。きっと伝わっていると思います。

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家具も食器も優れたデザインのものがそろう。子ども部屋はあるものの親子一緒に過ごす時間が長いそう。奥さんは石が好きで、自ら海で集めてきたものを飾ったり、庵治石のドアノブもお気に入り。

家のデザインにも生活感を感じさせない工夫が散りばめられていますよね。
竹田さん:エアコンや換気扇はどうしても浮いてしまうので、壁と同じ素材で塗った板を使って隠したり、直接塗装するなどして隠しました。また収納として欠かせないパントリーも、扉を閉めると壁に見えるようなデザインにしています。

奥さん:コンセントや照明のトグルもできるだけ空間に馴染ませたくて。トグルの偏りも低い位置にしたり、コンセントを床に埋めてもらったりしました。

竹田さん:壁のコンセントも普通は床から25cmのところに付けるのですが、ギリギリまで低い位置に設置。しかも横向きに付けるとスタイリッシュに見えるというアイデアも秀逸でした。奥さんの常識を疑うセンスがすばらしいんですよね。

奥さん:とことんこだわらせていただきました。小さい時からこんな家に住めて、子どもたちが羨ましいです。

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随所に散りばめられた“隠す”デザイン。子供部屋のデザインもシンプルで、イサム・ノグチの照明がついている。洗練されたデザインの中で暮らすことで、子どもたちの感性も育っていくのかもしれない。

家族の心を豊かにする
“好き”から始まる習慣

この家に住んだことで暮らしは変わりましたか?
旦那さん:前は妻の実家で暮らしていたので、家でくつろぐ時間が増えましたね。心が豊かになりました。

奥さん:あはは(笑)。

奥さまはいかがですか?
奥さん:実は私、こうみえて掃除がめちゃくちゃ苦手なんです。でも良い意味での緊張感がある家に住んでいることで、床にものが落ちていると気になるし、すぐに片付けるようになりました。朝起きた瞬間から『あぁ美しいな』と思えるこの家が大好きだし、常にその美しさをキープしておきたい気持ちになるんです。

娘さん:私もおばあちゃん家では散らかし放題やけど、こっちの家ではあんまり散らかさないようになった!

奥さん:やった!成果が出てる(拍手)。あとは人を招くことも増えましたね。私の友達を呼んで女子会をする時は、夫が料理も作ってくれるので最高です。

旦那さん:人が集まってワイワイしている雰囲気が好きなので、これからもたくさんの人に来てもらいたいですね。

住み始めてまだ半年ということで、これからの生活が楽しみですね。
奥さん:玄関前に広いスペースがあるので、小さい畑を作ってハーブや野菜を育てて、収穫したもので料理をしてみたいです。ゆっくり時間をかけて森みたいにしていきたい。

旦那さん:僕は趣味で大型バイクに乗るので、バイクやキャンプ道具を収納できる小屋を作りたいです。できたらDIYで…と思っています。

奥さん:マイホームといっしょに歳を重ねて、経年変化も楽しみたいですね。自分たちの“好き”に囲まれた空間で、これからもずっと心豊かに暮らしていこうと思います。

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最後は玄関でハウスハグ。初めての夏を迎えるのを楽しみにしているTさんファミリー。

 文:井上麻子
写真:佐々木孝憲

VOICE FROM HOMEBUILDER

私たちは『自分たちらしい暮らしをしたい』というお施主さんの想いを一番大切にします。まずはみなさんが抱く理想の暮らしを深く理解したうえで、チームヤエワークスが持てる建築、デザイン、職人の技術をすべて使って形にしていきたい。決して合理的とは言えないかもしれませんが、高品質でかつ住む人が心の豊かさを感じられるような、自分たちの手でしか作れない住宅をこれからも作っていきたいと思います。(ヤエワークス 竹田 徳さん)

株式会社ヤエワークス
YAEWORKS一級建築士事務所

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「デザインの点と点が繋がり街となる。」

地元・香川で長年活動してきた一級建築士と、県内外で実績を積んできた店舗デザイナーの2人が立ち上げたデザイン工務店。綾歌郡綾川町では築百年の古民家をリノベーションした「やえ珈琲店」も運営している。建築とデザイン、そして30年以上一緒に仕事をしてきた精鋭職人の力を集結させた技術屋集団「チームヤエワークス」として、住宅はもちろん、店鋪やリノベーションなども手掛ける。使命は自分たちの技術で人を幸せにすること。ヤエワークスの仕事が点になりそれが繋がっていくことで、世界に誇れるまちづくりを目指している。

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VOICE FROM MEDIA

本当にどこを切り取っても美しく、まるで家自体が一つのアート作品のようだったTさん邸。Tさんファミリーと竹田さんも友達のように仲が良く、家づくりにかけた2年という歳月の濃厚さを物語っていました。理想の暮らしの形は十人十色。目に映る景色すべてを好きなもので満たし、心の豊かさを感じながら暮らしたい。そんな暮らしのイメージから家づくりを考える方法もあるのだと、新しい発想を得た気持ちでした。

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